生活の倫理

生活の感想

『シュガータイム』小川洋子

 

 

長野で他人の本棚から勝手に読んで、続きが読みたくて買っちゃった本。

 

 

 

友達の家族が持ってる山小屋にあった本だから、他人って言っちゃうとよそよそし過ぎるかな。

 

 

 

人の本棚を見るのがすごく好きだから、チャンスがあれば真っ先に見てしまう。

 

 

冷蔵庫やクローゼット、引き出しなんかは開けちゃだめだけど、本棚はじろじろ見ても大丈夫だからありがたい。

 

 

だめってことにはならないでほしいな。

 

本棚なんてどの引き出しよりも私的な領域だと思うけど。

 

 

 

 

 

小川洋子は『博士の愛した数式』しか読んだことがなかった。

 

 

『シュガータイム』ってタイトルは小川洋子より山田詠美とかに似合いそうだなと思いながら5ページくらい読んだ。

 

 

全体のストーリーは『博士の愛した数式』の小川洋子が書きそうな、想像通りの進み方だった。

 

 

でもそのときに読んだ、最初の5ページの食欲や食べ物の描写があまりにも印象的だった。

 

 

 

なにもかもを胃の中に収めてしまいたくなる衝動。

これが食べたいと思って他のことが考えられなくなること。

食べたいという気持ちを満たすために費やされた時間を考えたときに感じる虚無感。

 

 

 

共感した。こういうことはよくあるし、こんな状態が程度の差こそあれ私の生活にはずっとあった。

 

 

私はたくさんのものを食べることができる。

同じものはあまりたくさんは食べられないけど、種類が変わったり少しだけでも時間が経ったらどれだけでも食べられる。

 

 

特に女の子と長い時間続けて一緒にいると、相手の腹具合を推し量って、自分の腹具合を申告することになる。

 

自分のお腹は昼ごはんをいっぱい食べたあとすぐでもおやつを受け付けてしまうから、おやつを食べたあとすぐでもタピオカを飲めるから、そのあとでもボリュームのある夜ご飯を食べられるから。

 

 

たぶん相手は、今はお腹がいっぱいで食べ物を食べたくないだろう。

 

 

たぶんいまおやつを食べてしまうと、あんまりボリュームのある夜ご飯は食べたくなくなるだろう。

 

 

このあとはカフェに行く予定だけど、すぐに言ってしまうと苦しいだろうから、少し歩いたり時間をおいた方がいいだろう。

 

 

 

お腹もすごく強いから胃もたれや、胃が疲れてるみたいな感覚は本当にわからないし、冷たい牛乳をどれだけでも飲めるし、焼肉も基本はあんまり焼かないほうが美味しいと思う。

 

 

朝からそんなに食べられない、みたいな感覚も本当にわからない。

 

 

 

パクチーしか嫌いな食べ物はなくて、好きな食べ物は挙げていくとキリがない。

 

 

 

こんなに食べ物を食べるのに適した人間も珍しいと思う。

 

 

 

好きなときに好きなように好きなものを食べていると、常人の3倍は食べてしまうから、すぐに太ることができる。

 

 

 

主人公は突然のものすごい食欲に戸惑い恐怖するが、なぜか体重はベスト体重から1gだって増えない。

 

ここを読んだときに一旦共感が切れた。

 

 

 

異常な食欲が肥満に繋がっちゃったら、たしかに作品の雰囲気は一気に暗くなるよね。

 

 

 

異常な食欲とともに生きつつ、恋人や家族との関係なんかの状況の変化で、描き切られないが最後には回復していきそうな気配を残して作品は終わる。

 

 

でもこの作品に、主人公の食欲に共感した、食べたら普通に太る私の救済は、どこにあるんだ。

 

 

2019/02/27 00:34

 

 

 

追加

お腹がめっちゃ強いって書いたけど、そういえば生キャベツをいっぱい食べた時だけなんかちょっとお腹が気持ち悪くなります。

最近春キャベツ安くてめっちゃ美味しいのでいっぱい食べてたらなって思い出しました。

なんなんだろこれ?

 

2019.3.5 20:19