『ファザーファッカー』内田春菊
いまとっくにぬるくなった湯船で、たぶん32度くらいだ、この本を読み終わった。
読んでて辛い雰囲気の小説だけど、最後の部分が弱い気がした。
虐待を受けていた主人公の少女が、そんな家に居続ける必要がないことにふと気付き出て行く、それだけだ。
虐待を加えていた父、またそれを許していた母の描写がないのはまだ理解できる。
しかし物語中で一貫して中途半端な描かれ方で、だから無意識になにかあるんだろうなと思っていた妹についてもなにもなかった。
そのことが特に不満なわけじゃない。酷い父親は悪として描かれる一方で、母親に対する少女の複雑な、しかし物語が進むにつれ確実に下がってゆく評価は、親に対する幻想がなくなってゆく過程をよく表していると思う。
ただなんとなく違和感があるなと思っただけ。
親に対する幻想が消えていくことが、大人になっていくことだと思う。
小学生が終わる頃に父に、中学生の半ば頃に母に対する過剰な期待を失って以来、私と家族の関係、少なくとも私の居心地は良くなった。
親を1人のものすごく親切な他人だと考えると、全てに納得がいった。
産んだってだけで本当に、よくこんなに面倒を見てくれるものだとしみじみ思う。
もうすぐ母の日だし、花でも送ろう。
1週間ほど前、ブックオフで100円の文庫をたくさん買ったときに、作者の名前に惹かれて読み始めた内村春菊。
そのときは代表作らしい『キオミ』を買い読んだ。
なんとなく惹かれて読む本には当たりが多い。
好きな作家が増えたのが嬉しい。
2018.4.18 5:55