『もういちど生まれる』朝井リョウ
冷たくした部屋で布団を被り、背後に汗ばむ気配を感じながら読み終わった。
世の中に美しいものはそんなになくて、たまにそれを見ると世界からの肯定を感じる。
午後6時前に滝川記念の横を通ったときに、日差しの角度がとても綺麗で、教会の鐘が鳴った。
この風景は私のことが好きなんだろうと思った。
こんなときに天地有情は本当なのだと思う。
輝きは文章の中にしかない。
しかないは嘘だ、言いたかっただけだ。人は文章を読むとき、その風景を思い浮かべながら読む。そのときの画というのは自分のなかの、想像できるなかで最高のものだと思う。
だから、文章はその人が美しく感じるものが創られ易い表現だと思う。
朝井リョウの小説読むと、小説を書くのは本当に大変なんだろうなと思う。
自分のなかの、かっこつけて人から好かれたくてすごいと思われたくて、外に出していない感情や思考が、作品内で読んでいて嫌になってくるくらいしっかり描かれてる。
でもそれだけじゃなくて、それぞれが救われるわけではないのに、読後感が光を見たような気持ちになる。
朝井リョウは青春作家みたいなイメージを持たれがちだけど、鬱作品は多いし、私はとても好きだ。
2018.08.10 04:45