『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國香織
中学生のころ、山田詠美が好きな男の子と付き合いたいと思っていた。
田舎の公立中学校にはそんな人は居なくて、もしかしたら居たのかもしれないけど知らなくて、居たとしても私と付き合ってくれたかどうかはわからないけど、そう思ってた。
おしゃれに恋愛をしてくれそうだなと思っていた、今思えば相手に頼りすぎだ。
専修に分かれてから、授業前後に話してくれる人がめっきり減ってしまった私と、哲学専修の授業で唯一話してくれる子がいる。
その子が最近は江國香織ばかり読んでると言っていたので、読んでみた。
作家は私小説を書かなくても、作品に自分を、生活を反映してしまうと思う。
自分自身と近いからか、とりわけ女性作家の作品を読むと、なんとなく作者像をその小説から作ってしまう。
江國香織は、あまりその像が描けなかった。
ほとんどの作家の作品からは、その人自身、あるいはその若い頃の自由な生活が、奔放な生活が、退廃的な生活が、静謐な生活が、浮き上がってくる。
江國香織はそれが弱いように感じた。
これは恥じらいなのか。単に作品を作るということに対しての心情の違いなのか。
わからないけど、ある種の押し付けがましさがこの人にはなくて好感を持った。
軽やかに雑じゃなく。
2018.06.28 23:28