『うれしい悲鳴をあげてくれ』いしわたり淳治
帯に惹かれて買ったけど、やっぱり帯が良い本は面白い。出版社に推されるだけのことはある。
この本の帯は、コピーがすごくいいってわけじゃないけど、手書き風の素朴さがいい感じ。
おしゃれ手書き風じゃなくて、本が好きなだけで特にセンスがあるわけじゃない普通の書店員が頑張って書いた手書き風。
こういうの得意じゃないからって、黒で文章だけ書くんじゃなくてさ。
ちゃんと色を使ったり大きく書いたり縁取ったりして、がんばって魅力を伝えようとするんだけど、そんなにおしゃれにはできない、みたいな。
もちろんそれを狙ってやっているわけだから、この帯作った人はすごい。
この本はショートショートとエッセイが集められてるんだけど、その中の密室のコマーシャリズムという短編について書く。
ショートショート自体はステルスマーケティングについての話なんだけど、そこから得られる教訓、みたいなのを話の最後に直接的に書いちゃってる。
それは違うでしょう。そういうSF的なショートショートとかの醍醐味は、その教訓的なのを直接は述べられなくても読み取って、ニヤニヤすることでしょう。
ショートショートに限らず、いい小説には直接は述べられない教訓みたいなのを含むものが多いと思う。もちろんそんなのがなくても面白い作品もいっぱいあるけど。
言っちゃだめってことはないけど、言っちゃうのはおしゃれじゃない気がする。
そういうことをわかっていて、あえて直接言っちゃったのかもしれないけど、あえてそうする理由はわからなかった。
そこが気になっただけで、ショートショートはしっかり面白いし、エッセイも脱力おしゃれですごく良くはあったのでおすすめはできる本です。
と、ここまでを、この本の9割がたを読んだ時点で書いちゃったんだけど、あとがきを読んでここまでの文章は全くお門違いということがわかった。
この本は雑誌に連載してたエッセイを集めたもので、ひとつひとつの文章は全部エッセイとして書かれたものだったそうだ。だから小説風に書いてる文章たちは全部、いしわたり淳治が急に例え話作り話を始めて、その心を最後に付けて、エッセイとしてうふふとなって終わる感じなんだろう。
雑誌連載を集めて本にしてるから、私みたいに無粋な感想を抱く人も出ちゃったんだね。媒体のせいにしていこう。
2018.06.27 00:33